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review

 ここでは私が読んだ本・論文(場合によってはwebページなど)についてレビューしていきます.怠け者な私でも,こうやってネットで公開すれば,見栄張りな気持ちから,読書意欲が促される(笑).そういった効果を期待しています(なおこのサイト自体も同様の目的があります).ということで,これはあくまで私的な関心からの軽い読書ノートです.
 取り上げる本は私の専門あるいはそれに近い範囲で,比較的,興味のある本が中心です.興味のない方には申し訳ありません.

言語関係 | 中国関係 | 歴史関係 | 人類学関係 | パソコン関係 | その他

言語関係

町田健(1994)『フロンティア総合英語』研究社.

 現役バリバリの言語学者が大学生時代に書いた本格的な英文法学習書.専門的研究の水準を知っている人が書いただけあって,「わかりやすい」とのうたい文句で,間違い・俗説ばかりを載せている安易な学習書とは一線を画している.簡潔かつ体系的記述で,学生だけでなく,一般の人にもお勧め.
 ある程度,英語のできる人が,「そんな事はわかっているよ」と,たかをくくっている,簡単な文法事項にも実はいろいろと問題がある(例えば,著者の専門でもある同書4章の時制).本書はそのような基礎的な事項に関して,きちんと読めば,誰にでもわかるように,本質的な説明がなされている.
 姉妹編の『フロンティア英文法』は更に本格的な内容である.また町田先生には他にも入門者向けの言語学書など多くの著書がある.

益岡隆志(1993)『24週日本語文法ツアー』くろしお出版.

 日本語研究の第一人者の書いた入門書.学校の日本語文法にアレルギー反応を起こした人にもお勧めの一冊.多分,文法に対するイメージが全く変わるはず.文法とはただ暗記するだけのものではない.自ら発見するものでもあるということがわかる.

仁田義雄,村木新次郎,柴谷方良,矢澤真人(2000)『日本語の文法1 文の骨格』岩波書店.

 現在の日本語学の水準の高さ・充実振りを実感するシリーズ(全四冊)のひとつ.日本語学に限らず,言語に関わる人は必読.
 各分野の概説にとどまらず,最新の知見や執筆者の創見が随所に盛り込まれている.私にとっては,格とヴォイスの章が一番,面白かった.

張xin1[金が3つある字]友 主編(2002)『現代語言学 自学指南』中南大学出版社.

 中国語で書かれたオーソドックスな言語学概説書で,なかなかまとまっている.
 本書は,何兆熊・梅徳明 主編(1999)『現代語言学』外語教学与研究出版社.の解説本である.何・梅(1999)は全国高等教育自学考試指定教材(以下,全高)のひとつである.全高シリーズとは中国全土で大学のテキストなどとして使われていて,書店にいけば必ず目に入る参考書である.この全高には各種の解説本も出ていて,張(2002)もそれら解説本のひとつである.
 何・梅(1999)はなかなか良い言語学概説書なのだが,内容が全部英語で書かれている.そこで張(2002)と併用すると,英語・漢語対照の言語学入門となり,重宝する.

中国関係

天児慧ほか(1999)『岩波 現代中国事典』岩波書店.

 その道の専門家が集まって,岩波から出した中国事典.良い意味でオーソドックスで,安心して読める.
 ご存知の通り,日本では近年,現代中国について大量の情報が氾濫している.ただそれらの多くはジャーナリスティックなものであり,極めて怪しげなものも少なくない.その点,本書は比較的中立的なアカデミックの立場から書かれており,信頼してよいと思われる.
 事典なので全部読むのは大変だが,飛ばし読みでも一通り目を通すと,他の本を読む時の背景知識がかなり変わるだろう.またお堅い事典にもかかわらず,アンディー・ラウのような芸能人も取り上げられている点は,中国の「現在」を肌で感じている,著者たちならではの目配せの広さが感じられる.

莫邦富(2001)『中国全省を読む地図』新潮文庫.

 中国各省についての情報が非常にコンパクトに集約されていて,有用.エピソードも面白いものが多い.それほど厚い本でもないので,すぐに読める.知ったかぶりするには最適(笑).ただ著者が日本語のネイティブでないせいか,日本語の表現に不自然なところも目立つ.

守屋洋ほか(1998)『中国の古典名著・総解説』自由国民社.

 中国語を勉強した人なら,古典の知識もきちんと身につけたいと誰しも思うが,実際には壁が厚い.一冊読むだけでも大変な,難解な古典が大量にあるのである.
 この本は名前の通り,中国古典名著についての概論で,史書,思想書,文学など主要な分野の流れや,各古典の大まかな内容がつかめる.中国古典の初心者にはうってつけといえる.後は,自力で原典に向かうのみである.でもこれがなかなかできないんだよね(^^).

漢字文献情報処理研究会(2000)『電脳中国学2』好文出版.

 中国学に関わる人が必要とする,パソコンの使用法・情報・ノウハウが満載.私としては,特に多言語処理について勉強になった.
 執筆者はパソコンに精通している人ばかりで,中国学に関係ない人にも役に立つようなパソコンの知識も載っている.今,パソコンを使わないで,デスクワークしている人は殆んどいないだろうから,広範囲な人にお勧めである.

歴史関係

寺田隆信(1997)『物語 中国の歴史』中公新書.

 中公新書の『物語 ××の歴史』シリーズの一冊.物語というだけあって,読み物として非常におもしろくできている.とはいえ,本書は単なるフィクションでなく,きちんとした考証を踏まえた事実を描いているのであり,それだけの重みがある.
 私も高校の歴史はいい加減にしか勉強しなかったくちなので,本書を入門書として読んだ.そのため,知らないことの連続だったのだが,あまり苦に感じなかった.これは筆者の筆力によるところが大きい.中国史の基本的知識が学べるのみならず,大きな目で見て,歴史はどうとらえられるか,という学問の醍醐味が味わえる好書と言える.

三上次男・神田信夫編(1989)『東北アジアの民族と歴史』山川出版社.

 題名の通り,東北アジアの民族と歴史の概説.高校の歴史教科書でおなじみの山川出版のシリーズ「民族の世界史」第三巻で,執筆者は一流の先生ばかり.
 日本にとって関係が深いのにもかかわらず,本当のところはあまりよく知られていないこの地域には,漢民族のいわゆる中華文化とは違う,独自の文化が栄えていたのが,よくわかる.東北アジアは多民族地域だったんですね,本来は.ただ事実関係が複雑すぎて,私にはいまだによく理解できない部分が多いです.悲しい(>_<).
 同シリーズの護雅夫, 岡田英弘編(1990)『中央ユーラシアの世界』(民族の世界史 第4巻)山川出版社.も同様にためになった.

司馬遼太郎(1999)『坂の上の雲』全8巻,文春文庫.

 日露戦争の話.この戦争を通して,日本がいかに近代国家として自立したかが描かれている.日本が主要なプレーヤーとして,世界史に初めて登場した時のエネルギーのすごさに圧倒される.それに対して,最近の私らの,このダラケ方は何と,反省してしまったりして (^^;.
 中国に来て少し長い間生活すると,やはりいわゆる歴史問題を考えざるをえなくなるのだが,小説という形をとってしか表現できなかっただろう,この大作を読むと過去の日本の立場というものが了解されて来る.
 それにしても明治の日本人には強烈な個性を持つ人(本作の主人公,正岡子規,秋山兄弟みたいな人たち)がゴロゴロいたんだなあと感心するばかりである.

人類学関係

科学朝日選(1995)『モンゴロイドの道』朝日選書.

 DNAや血液などの解析による最近の研究手法を裏づけとして,モンゴロイドがアジアからアメリカ大陸や太平洋へと拡散していった過程が様々な角度から論証されている.
 また人類の起源がアフリカにあるなど,従来の有力な説(例えば私たち現代人の起源)を分かりやすく説明しているだけでなく,私達のぼんやりとした常識に大きく修正を迫るような興味深い見解も示されている.
 例を挙げれば,北京原人がそのまま今の中国人やアジア人へと発展したのではなく,後から来た別の種が今のアジア人(モンゴロイド)の祖先となった可能性が高いとか,日本人が,遺伝子的には単一の集団とは見なせず,複数のタイプに分かれるとか,俗に沖縄の人はアイヌの人と似ているというが,よく調べると和人(いわゆる日本人)との共通点の方が強いと見なせる,などである.
 本書は科学雑誌に発表された連載をもとにしており,一般の人にもわかるように書かれているのが嬉しい.

21世紀研究会編(2001)『常識の世界地図』文春文庫.

 世界各国の文化・社会常識・習慣などがコンパクトにまとめられていて,便利.私みたいな人類学の素人にも素朴な興味が抱ける.また各国のタブーなどは旅行の際,実用的である.

泉靖一(1970)「朝鮮のシャーマニズム」『朝鮮学報』56号,1-12.

 日本の代表的な人類学者が書いた,シャーマニズムに関する論文.短い文章の中に,シャーマニズムに関する基本的知識が詰め込まれている.要旨の一部を引用する.

 もろもろの神霊と俗人の間を,神懸かりになって媒介する特定の人物が存在し,それが社会によって認められている場合,私たちはこのような宗教をシャーマニズムと呼び,その特定の人物をシャーマンと名づける.シャーマンの機能には,地域社会または血縁社会の公的行事を執り行う反面と,個人または家族の疾病を治療したり,不幸を取り除いたりすることを目的とするいわば私的行事を司祭する一面があって,いずれの機能が強調されているかは,それぞれの社会によって趣を異にする.

 新疆でも,南疆のウイグル族やイリのシベ族にシャーマンがいるとのことだが,シャーマンという語は元々満州語起源だそうだ.現代シベ語でもsamen「サムン」という.シベ族はシャーマンの本場とでも言えようか.

石毛直道(1995)『食の文化地理』朝日選書.

 世界各地の食文化や日本の食文化の特徴について書かれた本である.最近のテレビ,雑誌を見ればわかるように,健康のためにせよ,グルメにせよ,食事についての一般世間の関心はかなり高いものがある.しかしながら,人々の食文化についての知識は意外に奥行きを欠き,次々に流行を追うのみで,メディアに踊らされている感も否定できない.
 本書は人類学者として世界の諸地域の食文化を研究してきた著者ならではの広い視野から,素人が見落としがちな多くの事実を教えてくれる.例えば,日本人には当然の「主食」という概念は必ずしも,ヨーロッパなどの地域には見られないとか,韓国といえばキムチといわれるほど,最も伝統料理と思われているキムチだが,現在のように唐辛子を使うようになったのは18世紀後半で意外に最近のことであるとかは,ご存じない方も多いのではないだろうか.
 それほど大部の本ではないので,「ここはどうなっているのかなあ」と細かい部分にいろいろ物足りなさが残るものの,食の人類学への格好の入門書であるのは間違いないだろう.

パソコン関係

建設中

その他

四方田犬彦編(2003)『アジア映画(知の攻略・思想読本9)』作品社.

 コンパクトながら非常に充実した,アジア諸国の映画の概説本である.中東から東南アジアまで含む,アジアの映画について,新しい世代の監督を中心に紹介している.よく一口にアジアと言われるが,歴史・文化・人種・言語など共通点より,相違点の方が多いぐらいである.個々に独自の文化を持つ諸地域は多様な相貌を持っている.そんなわけで,アジア映画の全体像を掴むなど,そもそも無理な話ではあるのだが,この本はその課題に果敢に挑戦し,かなりの成功を収めているように思われる.映画評論家としてだけでなく,文学・思想などでも著名な編者の力量がいかんなく発揮されていると言えよう.
 映像技術はすばらしいが,ストーリーは単純なハリウッド映画,やけに思想的で素人には理解できない難解なヨーロッパ映画に飽きた人には,アジア映画は新鮮に感じられるのではないだろうか.この本を読んだら,映画が見たくなること,請け合いである.

maehara on-line

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